東京高等裁判所 昭和27年(う)4144号 判決
被告人 兵信
〔抄 録〕
論旨第一点について。
本件起訴状記載の公訴事実をみると、被告人が昭和二十六年十月頃から昭和二十七年二月頃までに丸山チヨ外四名から譲受けた主要食糧購入券(外食券甲)七、一〇九食分につき一覧表を添付し右譲受の日時相手方外数量を明確にしており、これによつて公訴事実の内容が特定し得るのであり、所論のような公訴事実の特定しない無効のものということはできない。なるほど本件記録中には検察官の意見として、本件公訴事実は被告人の譲受けた外食券の数量を内輪に見積つて起訴した旨の記載がありたとえば昭和二十六年十二月曾山梅野は坂井キク外数名から多量の外食券を譲受けており、被告人が曾山梅野から譲受けた外食券は起訴状記載の一、〇〇〇食分以外になお多量のものが存することを窺い得ないではない。しかし被告人の検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書中には本件起訴状に記載の数量の外食券を譲受けた旨の供述があり、とりわけ昭和二十六年十二月分として曾山梅野から譲受けた外食券が一、〇〇〇食分であることを認めると共に、右千食分以外に同月分としては曾山梅野から外食券を譲受けたことを否定しているのである。従つて起訴状記載の昭和二十六年十二月分の一、〇〇〇食の外食券譲受の事実については、被告人としては他にこれと類似する犯行の存することを否定しているわけであり、起訴状記載の公訴事実が他の犯罪容疑の事実と紛わしく、特定し得ないとの虞もないのみならず、右千食分の外食券が果して何人から曾山梅野に譲渡されたものであるかという点まで起訴状に明示する要はないのであるから、曾山梅野に於て千食分以上の外食券を他から譲受けた事実が存するにせよ又同人が千食分以上の外食券を被告人に譲渡した旨供述しているにせよ、これらの資料から、本件公訴事実の特定性を阻害すると認めることはできない。それ故本件公訴事実が不明確で特定できないとの非難は当らないのであり、論旨はその理由がない。
註 本件起訴状記載の公訴事実は、
被告人は法定の除外理由がないのに昭和二十六年十月頃から昭和二十七年二月二十日頃までの間前後十一回に亙り三条市西新保北区二七三番地の自宅に於て丸山チヨ外四名から別紙犯罪一覧表記載の通り主要食糧購入券(外食券甲)合計七、一〇九食分を譲受けたものである。